木村結衣の伝承
木村結衣は父親の意に反して車とバイクの世界に飛び込んだ。間もなくして自分のスクーターを手に入れメンテナンスを行い、レースに出場しては競争する快感に溺れていった。賞金の多いレースを求めた彼女は、違法のストリートレース大会で評判を築いた。勝利するたびに、連帯を示すピンクのハチマキを身に着けたファンを感動させたが、一方でライバルは怒りを募らせていった。結衣の最後のレースでは、多くの人が反則を疑ったが、それ以外は彼女が不吉な霧に飲み込まれたと断言した。その後結衣を見た者はいない。
猛スピードで人生のほとんどを生きてきた木村結衣にとって、素早い決断力は習性のようなものだ。アドレナリンで高揚する深夜のストリートレースでも、曲がりくねった長い道を逃げる殺人鬼との追いかけっこでも、必要とあれば結衣は何としても勝つ方法を見つけ出す。