クローデット・モレルの伝承
はじめて科学キットを与えられたときから、クローデットは実験が大好きになった。その情熱で早期に大学の奨学金を得た彼女は、チャットルームとネット掲示板を最大の交流の場として活用し、「サイエンス・ガール」というニックネームで植物学の知識を共有していた。ある夜、もっと自然と触れ合いたくなったクローデットは森に足を踏み入れた。数分も経たないうちに、見慣れた森は見分けのつかない歪んだ場所へと変形し、異世界の霧が彼女を包み込んだ。クローデットが帰り道を見つけることはなかった。掲示板のユーザーたちがクローデットを心配しはじめたのは、彼女の投稿が途絶えた1週間後のことであった。